「自炊」代行業に暗雲!? 最高裁が「自炊=著作権侵害」と判断

Book, Library
個人が所有する書籍を有償でデジタル化する、いわゆる「自炊」の代行作業を行っていた業者2社に対し、著名作家ら7人が「サービスが著作権侵害である」と提訴していた件について、2016年3月18日、最高裁判所は“著作権侵害”を認め、業者側の上告を棄却しました。
 
今回の訴訟は、書籍を複製する主体が業者なのか個人なのかの判断が争点でした。
ご存じのように、個人が蔵書を複製することは「私的複製」としてある程度の範囲において認められている行為です。
しかし、業者がこれを大規模に募集し有償で行うことはあくまで“業務”であり、私的複製には当たらない、というのが作家側、そして1審、2審の見解でした。
 
一方の業者側は、あくまで個人の“手足”としてデジタル化を代行しただけ、という言い分。
しかし、最高裁によって、その行為は「NO」と判断されたというわけです。
 
「自炊」は、思い入れのある本や雑誌をデジタル化して半永久的に保存できるだけでなく、保管スペースの節約にも一役買っています。
デジタル化された蔵書を読むための電子書籍端末の普及にも大きく貢献してきたと言っても過言ではないでしょう。
今回の判断はすべての自炊業者に対して下されたわけではありませんが、「自炊」=著作権侵害である、という空気が世間にできてしまったことは、個人的には非常に残念でなりません。
 
 
提訴された業者の1社である「スキャンボックス」(運営:有限会社愛宕)は、業務停止の判決を受けてサービスの停止を発表しました。
http://www.scanboxx.com/
 
また、プレスリリースにて裁判の経緯も公表しています。

http://www.ata5.co.jp/20120427_31.pdf

プレスリリースの中に掲載されている、有限会社愛宕の代表取締役である三谷純氏の“熱い”「感想と思い」を引用して、本記事を締めくくりたいと思います。
    3、終わりに
     
    有限会社愛宕の代表取締役三谷純の本件についての「感想」と「思い」を述べます。
     
    この度は、作家や漫画家の方が不安になるようなビジネスを行っていたことに関して、
    世間をお騒がせし誠に申し訳ございませんでした。
    今回、差止請求という形で私たちは認諾いたしますが、これだけは言わせてください。
     
    私たち自炊代行業者が存在するせいで

    「漫画家や作家が近い将来職業として成立しない」
    「ハイエナのようにやってきて不法なことをやっている」
    「本を愛していない」
    「電子書籍を出さないからスキャンするんだ。売ってないから盗むんだ」

    と言われたことに関して非常に勘違いをされているようです。
    まず、この事業に関しては本が存在しないと成立しません。
    また、その本はそれぞれの依頼者であるお客様がお金を払って購入した本です。
    その本を色あせることなく保存したいということは
    お客様はとても本を愛しているのではないでしょうか?

    私たちは再生ビジネスだと思っていました。
    高性能なスキャナーが登場し、スマートフォン、タブレット端末の普及という
    時代の流れで、これまで自宅に保管してあった「紙の本」を電子化という形で
    再生のお手伝いをさせて頂いてきました。
    スキャン仕上がりの品質にも大変こだわりました。
    マーカーや落書きなどもそのままの状態をスキャンしていました。
    途中に挟まれていたカラーページもその部分はカラーにするといったこだわりでした。
    【お客様からご依頼いただいた紙の本を、そのままの状態で電子化代行を行う】
    理念はそれだけです。

    「昔に購入し、保管してあった書籍を再度読む機会ができた!」
    「いつでもどこでも読めるようになった!」
    「いつも丁寧なお仕事に感謝いたします!」

    といった声を多数いただきました。スキャンボックスはこの様な品質重視の作業のため
    サービス開始後、納期は120~180日待ちといった状態が続きました。
    それでもお客様からはいつになったらできるんだ!といったクレームはひとつもありませんでした。
    昨年の東日本大震災時の計画停電等による納期遅延にもみなさま寛大に受け入れてくださいました。
   
 この作業にはどうしても時間と手間がかかってしまうために
    人材の確保は最低条件でした。単純作業と言えば従事した従業員に失礼な言い方かもしれませんが
    ”専門的な知識がなくても仕事ができる”というところに目をつけ雇用創出にむけて真剣に取り組んでいました。
    特に障害者、高齢者、シングルマザーといった就職困難層を登用しようと
    自治体の情報を調査しながら、誰でも作業が可能なようにオペレーションの確立や
    ワークショップの検討などを進めているところでした。

    電子書籍市場とはまた違う市場であることをご認識頂きたいです。
    本が売れなくなるとはまた別の次元なんです。
    同じ内容の文章であれば「紙」、「電子」お客様が好む方を選択できればいいのです。
    ただ私を含めお客様のニーズは”紙の本のまま電子で読みたい”なんです。
    ですので、本を購入し、電子化するのは普通の行為なのです。
    職業としてなりたたないはずがないのです。紙がいいという方も多くいらっしゃいます。
    現実、紙と電子を読み比べた場合、紙で読んだほうがはるかに頭に入る気がします。
    また、現在電子書籍市場はスマートフォンやタブレット端末それぞれの端末専用の配布方法となっており
    逆にいうと読む側の媒体の普及に左右されてしまう市場になります。
    世界に100台しか読む媒体がなければ同じ書籍は最大でも100冊しか売れないことになります。
     
    私たちのサービスを利用したお客様の一番満足する電子書籍とは
    紙の本のままの状態の電子書籍を売ることだと思います。
    そうすれば我々代行業者は必要ありません。
    今後、電子書籍市場が、お客様にとってよい市場となりますよう願っています。
     
    以上

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